ArcGIS Online 組織向けプランの感想②Esri Maps for Office

Posted by kiri on 2012 年 12 月 13 日
GIS, Web, 地図 / No Comments

まだ組織向けアカウントの期限が切れていないようなので、Esri Maps for Officeの感想を少々。

Esri Maps for Officeというのは、ExcelとPowerPoint向けのプラグインで、ワークシートに地図を追加したり、シート上のデータを地図上に表示させたり、スライドに地図を追加したりすることができる。Excel上で利用できるので、GISソフトがなくても地図表示を中心とする簡易GISのような使い方ができる。また、PowerPointでは、ネット環境さえあれば、プレゼンのときに地図を見せたり、気になれば属性も表示させたりすることができる。便利そうではあるが、これも、利用するには組織向けアカウントが必要になる。とりあえず使ってみたい人は30日の無料トライアルを(なんか宣伝してるみたいだ(笑))。

今回は、Excel上のEsri Mapsについて少し。

Esri Mapsで地図を表示した状態

Esri Mapsで地図を表示した状態

画像のように、Excel上に地図を載せることができる。もちろん、Excelデータの情報を、地図上に表示することもできる。地図上に表示するには、位置情報や住所データが必要になる。位置情報については、経緯度しか対応していないようなので、平面直角座標系などの座標値は使えない。住所データについては、日本の住所でもジオコーディングに対応しているので、町丁や番地レベルの情報が含まれた住所データであれば通常は問題なくジオコーディングできる。

前回の記事の関連で、今回はiタウンページから石川県加賀市の温泉旅館の住所リストを作って、ジオコーディングしてみた。重複を消したりして作成した53件のデータのうち、ジオコーディングに成功したのは22件で、31件はエラーになった。

ジオコーディングの結果

ジオコーディングの結果

ジオコーディングの精度が悪いのは、基本的にはデータの問題のような気がするが、タウンページで使用されている表記ぐらいには対応してほしいところ。今回のデータのうち、「成功」となったデータのほとんどは山代温泉のもので、山中温泉や片山津温泉の旅館のデータはジオコーディングできなかった。ちなみにGoogleマップでは正しい場所が表示されるものもあるので、ジオコーディング側(住所認識のシステムや住所データ)で対応できる問題のように思う。○○町1丁目1-1のような住所ならジオコーディングしやすいと思うので、大都市(住所体系の複雑な京都は除く)のデータがほとんど、という場合には問題にはならないかもしれない。

また、「成功」の意味は少し怪しく、多少間違っていても認識できたものは「成功」になっているようで、いくつかのデータは間違った場所にポイントされている。CSISのアドレスマッチングサービスのように、認識のレベルや精度が同時に利用できると正確さが判断できるので便利だろう。

もう一つ問題。画像にあるとおり、ジオコーディング結果にエラーがあると、「エラーの修正」という文字が表示され、クリックできるようになっている。しかし、エラーの修正自体は、地図上でできるわけではないようで(例えば間違った位置にあるポイントをドラッグして修正したり、認識できなかったデータを地図上にプロットしたりということはできない)、Excelのシート上の住所列の値を修正したうえで、ジオコーディングする必要がある。ただし、どこまで認識できているかはユーザー側に提示されていないので、どう直せばエラーなくジオコーディングができるのかはわからない。この点はできれば改善してほしい気がするが、そこまでするとちゃんとしたGISになってきてしまうかもしれない。

なお、ジオコーディングに際しては、ArcGIS Onlineで公開されているor自分の組織が公開しているフィーチャサービスを利用してテーブル結合することもできる。この場合は、住所情報でなくても、コードのようなものを使って地図上にデータを表示することができる。

さて、地図化に「成功」したデータについては、色分けなどができる。個別にアイコンを設定したり、自然分類などで色分けすることはできるが、階級区分のしきい値をキリのいい数字に変えるようなことはできない。ポイントデータをクラスターで表示したり、ヒートマップ(密度のラスタ)として表示したりすることもできる。ヒートマップは簡単に作成できるし、縮尺の変更に合わせて再計算されるので、けっこう便利かもしれない。

ヒートマップ(一部の位置は間違っている)

ヒートマップ(一部の位置は間違っている)

高度なGIS操作を求める人には物足りないと思うが、ごく手軽に地図化してみたい、という人であればEsri Maps for Officeはお試し版としていいかもしれない。

ArcGIS Online 組織向けプランの感想①iPadとスマホでフィールドワーク

Posted by kiri on 2012 年 12 月 12 日
GIS, Web, 地図 / 1 Comment

ArcGIS Onlineには組織向けプランというのがある。個人向けとの機能の違いは、フィーチャサービス(Feature Service)が使えたり、Esri Maps for Officeが使えたりする点にある。前者は、早い話がArcGIS Serverに似た機能をWeb上で提供してくれる感じのもので、後者はExcel上でGISが使えるというもの。今のところ、組織向けプランを利用するには、ArcGIS 10.1のサイトライセンスがあればその管理者に聞けば使えるだろうし、あるいは30日間のトライアル版のアカウントを作ることでも使える。トライアル版のアカウントを取得するには、このページにアクセスして、「30日間無料トライアル」をクリックして、手順に従う。今回は、トライアル版のアカウントを使ってみた感想。

さて、今回、ふと温泉旅行に行くことを思いついたので、そのついでにちょっとしたフィールドワーク(といってもほぼ写真を撮るだけ)をすることに。行き先は石川県の加賀市で、学生時代に入っていたサークルの、1回生のときの調査地だった場所。11年ぶりの訪問になる。調査の対象は、そのときの調査・研究対象だった、片山津と山代の温泉旅館で、事前にネット(楽天など)で調べたうえで、現存するもの、休廃業したものなどの写真を撮り、その他現地の状況を記録することにした。

事前の作業として、

1. ArcGIS Desktop(ArcInfo)で、ファイルジオデータベースを作成し、情報を保存するフィーチャクラス(ポイント、ライン、ポリゴン)を作成しておき、それぞれにアタッチメントが添付できるように設定した。アタッチメントを添付できるようにすると、iPadやAndroidなどでその場で撮影した写真を、個々のポイントなどに関連付けることができる。ただし、その設定にはArcEditorかArcInfoライセンス(10.1からはStandardかAdvanced)が必要。
2. そうして準備しておいたデータでmxdを作成し、ArcMap上からOnlineにアップロードしたうえで、Onlineのマイコンテンツ一覧から、フィーチャサービスを作成しておき、新しいマップを作成して、作成したフィーチャサービスをレイヤとして追加しておいた。
3. このマップを、自分の無料アカウントが入っているグループ(グループのオーナーは組織向けアカウント)で共有させて準備完了。

そして思い出の旅(笑)に出かけた。運悪く寒波到来の日で、寒いし雨も断続的に降るので、iPadなどを使ってフィールドワークには悪条件だった。それもあるけれども、iPadでフィールドワークというのは少ししんどいと感じた。

理由1. iPadで写真を撮るのは面倒。iPadを対象物に向けて写真を撮るのはけっこう重たいのでしんどい。iPad miniぐらいがちょうどいいかもしれない。
理由2. 野外では少々画面が見にくい。

例えば、これなんかを使って首からぶら下げれば、多少状況は改善されるだろうけれど、アタッチメント用に写真を撮る際の手間を軽減することはできない。もちろん、デジカメで写真を撮っておいて、あとでPCからブラウザ経由で写真だけアップロードという方法もあるけれど、せっかくの機能がもったいない。iPad miniならもう少しましな感じだけれど、ヨドバシで見ただけで、まだ現物は持っていない。というわけで、現地では主にAndroidスマホを利用した。画面は小さいものの、ArcGISアプリの機能は同じなので、そんなに問題はなく、写真撮影も簡単だった。Android搭載のデジカメとかなら(これとか)、カメラ1つだけで、よりきれいな画像を撮りつつ、ArcGIS Onlineにデータをアップできるかもしれない。

iPadは、ラインやポリゴンのように点をたくさん打つ必要があったり、少し広い範囲を表示しておく必要があるときに便利。なので、宿に帰った時とか、食事時とかに調査ルートを記入したりするのに使った。

旅行から帰ってから、データを見ようとArcGISからアクセスすると、10.0からは残念ながらデータが見れなかった。というわけで10.1が入ったマシンで閲覧。特にデータのチェックイン・チェックアウトをしなくても、編集したそばからデータが閲覧できるのは非常に便利。

ArcMap 10.1での表示

ArcMap 10.1での表示

ローカルに保存したければ、通常通りの手順で、シェープファイルやジオデータベースにエクスポートできる。ただし、アタッチメントを含めたままでデータをエクスポートするのはできない雰囲気で、こちらの環境のせいかもしれないが、Esriのフォーラムを見る限りでは、まだできない機能のようだ(米国Esri社員によるこのスレッドの最後の発言によれば、エクスポートや手動での更新よりもデータの同期に重きをおいているので、しばらくその機能は搭載されないとのこと)。この部分は非常に残念。もうすぐ組織向けアカウントの期限が切れるので、アタッチメントの写真を1つずつローカルに保存しておくはめに(携帯にもデータはあるので絶対に必要というわけではないけれど)。

ちなみに、今回の作業は、ArcGIS Serverでもできる(はず。同じ実験はしていない)。もしArcGIS Serverを運用できる環境下であれば、無理にArcGIS Onlineを使う必要はないかもしれない。クレジットを消費してしまうし。ただ、組織向けアカウントがあれば、Esri Maps for Officeが使えるので、ArcGIS Serverも運用できる環境なら、組織向けアカウントはEsri Maps for Office専用にして、データ共有・編集はServerで、という使い分けがよさそうだ。

もうすぐトライアル版のアカウントは期限切れなので微妙だけれど、もし大学でのアカウントが使える状況になるのであれば、Esri Maps for Officeについても何か感想を書きます。温泉街の現状・変化についても、データをもう少し整理して何か書く予定。

久しぶりの更新

Posted by kiri on 2012 年 11 月 20 日
その他 / No Comments

帰国後に学会発表が2つあり、ようやく終わってひと段落したので少々更新。

しばらく余裕があると思うので、可能であればサイトのリニューアルや中途半端なコンテンツを整理・完成させたいところ。MMMのデータも早く更新します。遅れてしまってすいません。

MMMのデータも含め、GISデータと統計データを、ArcGIS等で利用しやすい形で公開していくことも計画中。ただし、学内サーバはいろいろと制約が多いので(その分セキュリティ面は堅牢だけれど)、独自ドメインで外部サーバにサイトを引っ越したうえで公開になりそうです。

ロンドン雑感:ロンドンの小地域統計

Posted by kiri on 2012 年 10 月 24 日
ロンドン / No Comments

本日2回目の投稿(こちらでは日付が変わっている)。今日でCASAに来るのは最後。本格的に作業するには残り時間が中途半端なので、今日はあまり何にも着手できていない。せっかく時間があるので、ロンドンの小地域統計のお話を。

小地域統計というのは、読んで字のごとく、「小地域」の統計であって、小地域というのは、一般的には「〇〇町1丁目」や「大字〇〇」など、市区町村よりも小さい単位を指す(分野によっては市区町村レベルを「小地域」と呼ぶこともある。人口学のうち、特に動態を研究する分野はそうだったと思う(違うかもしれない))。日本の場合、国勢調査や事業所・企業統計調査(現・経済センサス)、商業統計調査、工業統計調査、農(林)業センサスなど、悉皆調査に基づく代表的な統計で、小地域統計が作成されてきた。現在は、e-Statなどで一部のデータを閲覧できるし、自治体も自分の地域に関連するデータを統計担当部署のウェブサイトで公開していたりする。京都市もそうだし、東京都や横浜市などは積極的に公開しているほうだろう。ただし、自治体によって公開状況にはばらつきがあるし、集計・公表されている項目もばらばらであることが多い。

一方、英国では、同様にセンサス(国勢調査)結果に関する小地域統計が作成・公表されている。英国センサスの小地域統計で使われる単位は、このページで詳細に説明されている。Enumeration Districtが日本の調査区にあたるが、通常、詳細なデータが公表されるのはOutput Area (OA)よりも大きな単位になる。前述のページにもあるとおり、最も小さいOAは、40世帯100人というサイズであり、空間的には日本の街区レベルの大きさぐらいといったところか。英国の場合、このOAを規模などが同一になるようにまとめ上げて作ったSuper Output Area(SOA)という単位も作られている。さらに上の階層として、Wardがある。Wardは日本語で通常「区」と訳され、政令市の区だけでなく特別区の訳語としても使われるが、英国のWardは自治体としての区ではなく、地方自治体内を区分する選挙区などの単位として使われる。ロンドンの場合、大きさは平均すると人口1万人程度の大きさなので、日本で言えば小学校区ぐらいの規模になる。京都の元学区や名古屋の連区と同じような位置づけだろう。

さて本題。センサスに関するロンドンの小地域統計は、基本的に英国のセンサスの集計体系にしたがって作成されている。データは、GLA(Greater London Authority)のサイトから一部がダウンロードできるが、通常、詳細なデータを入手するには、Census.ac.ukなどを利用する必要がある。ただし、データのダウンロードには、英国内の大学・研究機関のアカウントが必要なので、日本を含め、海外の研究者が簡単に入手することは難しい。一方、GLAのサイトには、センサス以外も含む様々な小地域統計が公開されていて(興味のある人は、London Datastoreで検索してみてください)、基本的に誰でも利用できる。特に便利なのは、Ward Profilesと、MSOA AtlasLSOA Atlasの3つ。MSOAとLSOAはSOAのうちのそれぞれ1つで、LSOAが最も詳細で、人口規模の平均は約1,600人。MSOAは約8,000人で、Wardは約12,000人。リンク先のそれぞれの3つの記事からは、Excelファイルをダウンロードできるほか、FlashベースのWebGISへのリンクもある。MSOAとLSOAは数が多いので、少し動作を確認するだけならWard Atlasにアクセスするのがよさそう。

Ward単位のGCSEスコアの分布(2011年)

Ward単位のGCSEスコアの分布(2011年)

最初は、GCSEという義務教育終了時に受ける全国的な統一試験(ニュースダイジェストによる説明)の結果に関するものを地図に示してみた。地図の中心がほぼロンドンの都心部のあたりになるが、南部や北西部の郊外でスコアが高く、都心やその東部、北東部ではスコアが低いことがわかる。

Ward単位のIncome Scaleの分布(2010年)

Ward単位のIncome Scaleの分布(2010年)

続いて、Income Scaleという指標。詳細な解説は、このPDFにあるが、ごく簡単に言うと貧困層の多さを表す指標になる。数字が大きいほどそのWard内の貧困層は多くなる。完全ではないものの、ぱっと見る限りは、GCSEのスコアが低い(薄い青)地域と、Income Scaleが大きい(濃い青)地域はだいたい対応している。ロンドンの場合、Ward単位で見ると、貧困と教育の程度の相関関係は明確なようだ。

Ward Profilesを使うとこのような地図をすぐに描くことができるし、Excelファイルがあるので、GISデータさえ入手できれば自由に地図を書くこともできる。統計的な分析ももちろんできる。学術的関心からすれば、今回挙げたような貧困や教育に関するデータは非常に興味深く、このようなデータを小地域単位で公開しているGLAは非常に素晴らしい組織のように思う(統計データの公開という点についてのみ)。日本の場合、同じようなデータを入手しようにも、全国統一の学力テストの結果は学校別では公開しない方向だし(泉佐野市は公開するらしい)、貧困の状況がわかるようなデータはほとんどない。Income Scaleの説明が書いてあるこのPDFには、貧困に関するその他の指標が紹介されているが、東京や大阪など、特定の大都市でこれぐらい作成できると、貧困に関する学術研究がより促進されるように思うのだけれど。。。データ的にはデリケートなものを多分に含むので、一般に公開するのは難しいかもしれないが。入手可能な指標から何とかして都市内の貧困に関する指標を作ることができないものか。。。

ロンドン雑感:London Metropolitan Archivesでカードを作る

Posted by kiri on 2012 年 10 月 24 日
その他, ロンドン / No Comments

今日はCASAに行く最終日の前日だった。何人かには今日でお別れ。

いつも備忘録的な記事なので、今日は役に立ちそうな情報を少し紹介。

今回の滞在の初期の頃、調査のためにLondon Metropolitan Archives(LMA)に行った。名前はMetropolitanだけれど、実際に運営しているのは、大都市圏行政を担うGLA(Greater London Authority)ではなく、City of London(いわゆるシティと呼ばれる地域を管轄する自治体)。LMAは、基本的には開かれたアーカイブで、展示を目的とした資料館ではなく、図書館的な資料館。京都でいえば京都府立総合資料館のような施設。そのため、基本的にはLMAは誰でも使えるが、書庫資料を閲覧したり、コピーしたりするにはカード(History Card)を作る必要がある。開架でも多少の資料は閲覧できるが、日本からわざわざ見に行くような資料はほとんど書庫にある。今回、History Cardを作ったので、その際の簡単な手順をここにメモしておきます。必要な書類は大英図書館(British Library)と似たようなものなので、大英図書館に行きたい人の役にも立つんじゃないかと・・・。

まずはLMAの場所。基本的には公式サイトのリンクを参照。最寄りの地下鉄駅はFarringdonだが、駅からは10分~15分ほどかかる。ちなみにCity of Londonの範囲外。

建物の入口から入ると、まず受付(セキュリティ)。名前を書いた記憶がある(ちょっと覚えていない)。もしHistory Cardを持っていれば、そのカード番号も記入する。持ち込み手荷物用の袋をここでもらえる(ただし、できれば返して欲しいという張り紙がどこかにあったので、使用後に返した)。

入ったら2階(英国なのでfirst floor)に行き、持ち込める手荷物以外をロッカーへ。ここは休憩スペースにもなっている。飲み物の自販機はあるが、食べ物はなかったような(おやつ系もなかったはず)。

さらにそこから上の階にあがり、ようやく閲覧室へ。閲覧室には、リファレンス的な図書(辞書、索引等)と一部の資料が開架になっている。メディア資料もここで閲覧できる。また、History Cardを作るためのインフォメーションカウンターも、入ったところにある。というわけで肝心のカードの作り方。

必要な書類(日本ですること)

  1. 住所を証明するもの(もちろん英語)
  2. パスポート(これは本人証明用)

詳細はこのページを参照。パスポートは基本的に持っていけるとして、問題は1の住所を証明するもの。相手はもちろん英語しかわからないので(他の言語もわかるかもしれないが、日本語(+漢字)はかなりレアなので)、英語で住所が印刷してあるもので、かつサインのあるような資料でないといけない。今回は、入国時に見せようと思っていたシティバンクの残高証明があったので、LMAのページにある「Bank/building society statement」に何とか該当するだろうと思って、これを持っていった。シティバンクの残高証明は、日英併記だけれど、たまたま宛先住所は英語(ローマ字)で書かれていて助かった。もしシティバンクに口座がある人は、これを持っていくと意外な使い道(日本の住所の証明)があるかもしれないので、作って持ってくると便利。

事前の作業(インターネット)

カウンターまでの手順を書いておいて戻るけれど、LMAに行く前に、インターネットで登録をしておくと、現地でのやりとりが簡単になる。アクセス先は、このページの一番下。指示通りに普通に入力する。ただし、住所については、上記の2の証明書類に書いてあるとおりに入力する。ここで間違うと、証明書類が証明にならなくなる。ローマ字の打ち間違い、SHIとSIの違い、マンション名の英語(自分の場合、シティの残高証明では、マンション名の英語部分は英語になっていた)など、十分チェックしよう。入力が終わっても、特に印刷する画面などはないので、ちょっと不安になるが、エラーなどが出ていなければ大丈夫。

LMAでの手続き

インフォメーションカウンターで、History Cardを作りたい、と言ってから、パスポートを見せる。カードを作る専用の場所に導かれるので、そこでパスポートを見せると、担当者が名前を探してくれる(この間に何かやりとりをした気がするが覚えていない)。事前にインターネットで登録していれば、すぐに見つかるので、住所を証明する書類も提出(あとで返してくれるので、コピーを持っていく必要はない)。OKが出れば、そのまま顔写真の撮影をして、その場でカードが完成。学生証のようなHistory Cardが出来上がる(ちなみに、初めてCASAに来た時も、こんな感じの手続きで1分もしないうちにIDカードが作られていた。英国の大学や図書館にはこういうカードを作る機械(プリンタ的なもの)がよく置いてあるようだ。日本にも欲しいところ)。

あとは資料を検索して、申し込んで閲覧するだけ。残念ながらコピーをとるような資料はなかったので、コピーの仕方は不明。

ちなみに、大英図書館のサイトを見ると、資料の閲覧に必要なReader Passを取得するには、やはり住所を証明するものが必要なようで、その1つとして「Bank/Building Society Statement (no online/bank branch print-offs)」が挙げられている。基本的にはLMAと同じものを求められているようなので、シティバンクの残高証明を持っていくと大丈夫だと思われる(実験はしていないのでわからないが、かなり確実と思われる)。また、大英図書館では、日本人(日本語のわかる)担当者がいるときには、「Credit Card Statement」の日本語のもの(つまりクレジットカードの明細)があれば大丈夫らしいが、必ず日本人担当者がいるかはよく知らない。少なくともシティバンクの残高証明であれば、運悪く日本人担当者が不在(長期不在だったら大変)でもReader Passを作成できるはずなので、持っておいて損はないと思う。

また、前々回ぐらいに滞在したとき、Westminster City Archivesにも行ったけれど、ここはパスポートを出すだけで簡単なカードを作ってくれた。ただし、カードがなくても書庫資料を見たり、コピーはできた気がする。2年前の年末なので詳細は覚えていない。

ロンドン雑感:最後の週末にARの実験

Posted by kiri on 2012 年 10 月 22 日
GIS, ロンドン, 地図 / No Comments

ほぼ2ヶ月の英国滞在も今週で終わり。最後の週末だった今日(こちらはまだ日曜の夜)は、最近はまっているARでちょっとした実験をしてきた。

前回の記事で、CityEngineで作ったモデルをARとして表示して、位置情報付きのAR表示を実験して失敗した。でも、よく確認すると、AR-media Playerの使い方が間違っていたようで、GPSのないWiFiモデルのiPadでも位置情報付きのARモデルを表示できることがわかった。そこで、当初考えていたものを、ロンドンにいるうちに実験してみた次第。

考えていたものというのは、3次元的な地図(都市モデルのようなものではなくて、通常の主題図を3次元化したもの)を、見晴らしのいい場所からARで表示するというもの。もしAR-media Playerでうまく表示できると、例えば、巡検や学校の遠足などで街を見下ろすことのできる展望台などに行ったときに、ARを使って実際の景色と主題図を重ね合わせるというようなことができる。単に手元の紙地図やデジタル地図で見るよりも、実際の景色と重ね合わせることができると、よりわかりやすくなりそうに思うので、今回の実験をしてみた。

ロンドンの街を見下ろせる場所としては、例えばグリニッジ(天文台のあるところ。都心部は見えないが、再開発地域のドックランズがよく見える)とか、ハムステッド・ヒース(ロンドン北部の公園)などがあるが、今回はロンドンの友人から教えてもらった場所を選んだ。その場所は、テムズ川右岸(南)にある美術館、テート・モダンにあるレストラン。一部はカフェになっていて、そこから対岸のシティ(都心部)がよく見える。

テート・モダンから見たシティ方面の景色

テート・モダンから見たシティ方面の景色

少し寝坊したけれど、11時過ぎに到着。運良くそんなに混んでおらず、比較的よい場所が確保できた。コーヒーを頼んで早速実験。

ARの実験

ARの実験

こんな感じになりました。この図(モデル)が何を表示しているかというと、ロンドンの小地域(大きさは日本の小学校区ぐらい)別の所得のデータで、モデルの高さは所得の少なさ(ややこしいけれど、元データがそういう数値になっている)を示し、赤は所得が低い地域、青は所得が高い地域、緑はその中間になる。このデータについては後日記事にします。この画像では、諸般の事情があって、モデルは多少動かしてあるけれど、完成予想には近い雰囲気になった。少し失敗だったのは、一部のモデルが透過し過ぎてしまって、正面のセント・ポール大聖堂のあたりにうっすら写っていて、心霊写真のような感じになってしまったこと。これはモデルを作る段階での失敗。

もう一つ大きな失敗があって、これはモデルを動かした原因でもあるのだけれど、iPadのコンパスがうまく動作せず、テート・モダンからセント・ポールに向かって(北方向)、iPadを置いていたのに、コンパスは左向きになってしまっていた(画像では確認しにくいが、iPad画面上のテムズ川の向きと実際のテムズ川が直交している)。なので、iPadをセント・ポール方向に向けても、表示されるARのモデルは、テート・モダンから西に向いたときに見えるべきものになっていた。

iPadのコンパスの向きと実際の向き

iPadのコンパスの向きと実際の向き

ごく簡単な実験だったけれど、今後のヒントになりそうなことがいくつか。

  1. iPadはGPSつきのモデルのほうが正確に利用できる。WiFiモデルでも、コンパスが正確なときがあるが、そうでないときもある。いちいち調整するのは面倒なので、実用上は、GPSつきモデルを使うほうがいいだろう。23日(英国時間夕方)に発表されるであろうiPad miniにGPSが搭載されていれば使えるだろう。
  2. テート・モダンぐらいの高さからだと、地平線が近いこともあり、表示されるARモデルはかなり高い位置になってしまう。例えば山の上とか、かなり高いタワー(しかし、ロンドンには公開されている展望台が少ない)からであればもう少し見やすい感じになるような気がする。
  3. GISデータをそのままSketchUpに読み込むのは少し面倒で、今回の方法(詳細は省略)では、気軽にいろいろと地図を作ることができるようなものではない。ArcGISからSketchUpのモデルとして出力するまでの中間的なツールの開発もしたほうがよさそうだ。

というわけで、ARについてはもう少し実験してみる予定。経過はここで紹介していきます。

 

Esri CityEngine 2012 つづきのつづき(AR: Augmented Reality)

Posted by kiri on 2012 年 10 月 18 日
GIS, Web, 地図 / No Comments

今日は2連投。CityEngineで作ったモデルからAR(Augmented Reality:拡張現実)用のデータを作って表示してみた。

AR-media Player for iOSで表示したARモデル

AR-media Player for iOSで表示したARモデル

今回、AR-media Plugin for Google SketchUp(Professional版)を買った。無料版のSketchUpでもこのプラグインは利用できるし、AR用の自分のモデルを出力できる。Professional版だと、マーカーに基づくAR表示だけでなく、位置情報に基づいた表示もできる。

手順は、CityEngineから3ds形式でモデルを書き出し、Google SketchUpでインポートして、AR-media PluginでiOS向けにエクスポートするだけ。マーカーはデフォルトのものを使っているので、特にややこしい設定はしていない。エクスポートしたファイルは、iTunesを介してiPadにコピーした。iPadのSafariを使ったWeb経由のダウンロードでもiOS側のアプリに保存できるので、Webでデータ公開も簡単なようだ。できるなら位置情報に基づいたARも実験してみたいのだけれど、あいにく手元のiPadはWiFiモデルなので、GPSがなく、うまく位置情報を拾ってくれなかった。もうすぐiPad miniが出るようだけど、SIMなしのWiFi Cellularモデルが買える環境下なので新しいiPadでも買って帰ろうか。開封せずに持って帰ればVATがいくらか還ってくるし。

 

もうすぐ帰国

Posted by kiri on 2012 年 10 月 18 日
GIS, その他, ロンドン, 学会発表(国内) / No Comments

大航海プログラムによる3度目の滞在もそろそろ終わり。来週には帰国します。やり残したことはまだありそうですが、またの機会を期待して。

そういうわけで、帰国後の仕事についていくつか告知。

来週、10月27日(土)に立命館大学衣笠キャンパスで、GIS Day in 関西 2012が開かれます。午前は講演があり、午後はGISのワークショップ(事前申込み)。関西の方で興味のある方はご参加ください。

再来週、11月2日(金)と3日(土)に東京大学空間情報科学研究センターで開催されるCSIS DAYS 2012で発表します。空間情報科学全般に関するたくさんの発表がありますし、参加は無料なので、興味のある方はどうぞご参加ください。

そして来月、11月17日(土)と18日(日)に立命館大学衣笠キャンパスで人文地理学会大会が開催されます。私はポスター発表をする予定です。参加費2,500円が必要ですが、京都観光のついでに少し参加されるのもいいかもしれません。

さて、MMMの更新が必要な時期になっていますが、現在ロンドンにいるため、更新できません。前回更新以降、10月1日に白岡市が誕生していますが、市制施行なので、地図データは属性を変更するだけで利用できます。帰国後早いうちに更新しますが、当面はその対応でご勘弁ください。

Esri CityEngine 2012 つづき

Posted by kiri on 2012 年 10 月 13 日
GIS, Web, ロンドン, 地図 / No Comments

あるワークショップで発表があったり、いろいろと忙しくしていたので、久しぶりに更新。

この間、CityEngineの2012がリリースされたので、トライアル版をインストールして、Web Sceneの作成まで試行錯誤しながら挑戦してみた。

CityEngineのWeb Scene(Firefoxで表示)

CityEngineのWeb Scene(Firefoxで表示)

画像のように、とりあえずそれっぽい街の風景を作って、ArcGIS Onlineにアップロードして、ブラウザから閲覧するところまでは完成した。マニュアルが英語だけなので(トライアル版だからかも)、少々苦労したものの、Pythonあたりがわかる人であれば、比較的簡単にこの程度のモデルを作ることはできるのではなかろうか。いくつか苦労した点があったので、簡単なリストにしておきます。

  • 建物のフットプリント(平面図)として、Shapeファイルを読み込むことができるのは非常に便利なのだが、個々の建物ポリゴンをextrudeで3次元化した場合の前面の判定が自動でなされるので、前面だけ違うテクスチャをつけたり、見た目を変えたりするのが大変。そのロジックはマニュアルで解説されているので、今回は、ポリゴンを構成するセグメントのうち、道路縁に一番近いものを特定し、セグメントの配列を変えることで対応した。ArcGISでのこのような処理にはVBAを使っていたのだけれど、今はPythonがメインということで、今回初めてPythonを本格的に触った(要望があればスクリプトを公開するかもしれません)。
  • 道路の中心線と幅員のデータがなかったので、道路縁データから何とかして簡易に求めた。ArcInfoにはそんなツールがあった記憶があるが、手元にはArcViewしかないので、ラスタを駆使して何とか計算。交差点が怪しげな雰囲気になっているが、CityEngine側の処理でスムージングできた。ちなみに、道路のモデルは、サンプルの中で最も現代的そうであったフィラデルフィアのデータをそのまま利用したが、歩道のモデル・テクスチャが重いので、歩道は白いモデルだけにしている。
  • Web Sceneにエクスポートして、ArcGIS Onlineにアップロードすることは簡単なのだけれど、Web SceneはなぜかChromeでは動かなかった。Chromeでは、最初の動作確認やファイルダウンロード、展開まではうまく動作するものの、初期化中の表示のまま止まってしまう。いろいろと試行錯誤した結果、データが大きすぎることが原因かもしれないという予想は立てているが、実際のところどうなのかはよくわからない。ちなみに、Windows上のFirefoxとMac上のSafariでは問題なく動作する。Chrome(とChrome Frameを入れたIE)だけ、WindowsでもMacでも動いていない。データの問題ではあるだろうが、可能なら改善を期待したいところ。

というわけで、とりあえずひと通りの実験まではできたので、今のところ満足。

英国滞在もあと2週間を切ったけれど、日本(職場)でもCityEngineが使えるといいなあ。可能なら授業で見せたい。

Esri CityEngine 2012

Posted by kiri on 2012 年 10 月 1 日
GIS, Web, ロンドン / No Comments

先日、ロンドンで開かれた高等教育関係者向けのEsri UKのセミナーに参加した。
聞きたかったのはArcGIS 10.1、CityEngine、ArcGIS Onlineの話で、それぞれ期待できる内容でよかった。
なかでもCityEngineは、最新のバージョン2012でウェブビューワが利用できるようになるとのことで、いろいろと便利になりそう。

日本でもArcGIS 10.1と同時に、販売が開始されるらしいが、まだ知名度は低いと思われるので少し解説。
CityEngineは、都市景観の3Dモデルを、比較的簡単な設定で自動生成してくれる便利なソフトウェアで、三丁目の夕日に使われたらしい。
映画やゲームの背景としての利用のほか、都市計画等での利用も期待されている。

http://video.arcgis.com/watch/1760/3d-land-use-zoning

例えば、Esriのサイトにあるこの動画では、建物の高さや形状を、パラメータを調整するだけで変化させている。
多少の設定は必要なものの、CityEngineを使えば、再開発の前後の景観を簡単に示すことができるし、必要に応じて高さなどを調整することも簡単。
ウェブ版のビューワを使えば、一般向けに情報提供することもできる。
しかもこのビューワは、WebGLを使っているので、ブラウザによってはプラグインが不要である(現状はデフォルトで利用できるのはChromeのみ)。
サンプルはArcGIS Onlineにすでに公開されているので、興味のある方はどうぞ(少し重いかもしれない)。
http://www.arcgis.com/home/item.html?id=86f88285788a4c53bd3d5dde6b315dfe

このような利用のほかに、教育での利用もできそうだ。
それは、様々な土地利用モデル(例えばチューネン)を、CityEngineで可視化するというもので、CASAの院生が自身の研究成果として発表していた内容である。
残念ながらその動画やイメージはオンライン上には上がっていないようだけれど、地代などのパラメータを操作すると、3Dモデルが土地利用に合わせて変化するというもの。
前にも紹介したチューネンモデルの仕組みを2次元的に表現するソフトの3D版のようなものだけれど、3Dになるとよりわかりやすい。
高校や大学のPCすべてにCityEngineを入れるのは難しいだろうが、パラメータを調節しながら3Dでその結果を確認できると、モデルがどういうものかをしっかり理解できるだろう。
単に、式やグラフだけでこうなります、と話すよりは、3Dのほうが理解しやすいのは明らかだ。
デモなどを見る限り、ウェブビューワで3D表現に関するパラメータの操作をするのは難しそうだが(おそらくレイヤのOn/Offだけ?)、そういう部分もできると、教育分野への活用もしやすくなるだろう。

チューネンモデルのような古典的・基礎的なモデルはもちろん、CityEngineを使うと、様々な都市モデル(モデルは必ずしも3Dを意味しない)の視覚化が簡単にできるようになる。
どんな感じでEsriがこれからCityEngineを売り出していくのか楽しみだ。